2014年11月04日
【秋のセミナー・まとめ】中3の「受験期」 どんな取り組みを していますか?
報告:中村岳夫(東京・中野区立北中野中学校)
・中3生のこの時期は、いよいよ進路選択・決定に向けて不安に陥り、孤立感や孤独感に押しつぶされそうになる時です。一方、教員側はどうしても進路希望調査にもとづきつつ点数や偏差値を意識した進学指導になりがちな時期でもあります。
うっかりすると一番肝心な生徒たちの気持ちを理解しないまま機械的な振り分け的な「進学指導」に陥る危険があります。
そこで今回はこの時期にこそ生徒たちの固くなったその気持ちを少しでもほぐすことができないかと、取り組んだ二つの実践を報告します。
① 進路相談「どうして分かってくれないの!?」Q&A
この時期(私はいつも9~10月ごろ)に不安なことや心配なこと、気になることを自由に書いてもらいます。実名は要求せず、必ずペンネームで書いてもらいます。もちろん、私たち自身もだれが書いたのかは分かりません。だれが何を書いたのか、が必要なのではなく、受験生としての不安や心配を共有していくことを目的としています。
こうして全クラスで書いてもらった率直な気持ちを学年だよりに掲載していきます。これだけでも生徒たちは興味を持ってお互いの文を熱心に読み、少しずつクラスや学年の緊張した雰囲気が和んでいくものです。以下に一部を紹介。
・一つひとつ成績が全く伸びず、どんなに学習してもテストの点数が上がらなくて心配です。(あいうえお)
・志望校のテストでどのくらいの点数がとれるか分からない。(K)
・今はまだ行きたい高校が4校あり、一つに絞っていません。もう遅いのかみんなに聞きたい。(妖怪オッチ)
・テストで必ず1教科ひどいこと。どうにか毎回ある凡ミスをなくしたい。(T.M)
・親と自分の進路希望が大きく異なっていて、その問題でもめることが多い。(バロッテ)
・みんなは土日どのように生活していますか?(わいわい)
・勉強していてもやる気が起こらない。やらなければいけないと思うのだが、全力でやろうと思えない、というのが悩みです。(快晴)
・わざわざ勉強して、高校行って何になるんだ?高校行ったらその次は?みんながみんないい職業につけるってわけじゃないじゃん。(るのまえ)
・目指している高校の倍率が高い、と親におどし半分で言われました。こっちがこれでいいと言っていることに文句をつけるのはなぜですか。どういった心理でそんなことを言えるのでしょうか。(リーク)
・まだ偏差値的に不安があり、志望校は決めてはいるのですが、受かるかどうか不安です。勉強はしているのですが、身についているのかも分からず、「大丈夫かなぁ」と思ってしまいます。(ころころ)
そして次に、希望者に学年だよりに掲載された友だちの不安なことや心配なことに自由にアンサーを募集し、再び学年だよりに掲載していきます。当然、正解などないアンサーですが、「自分だったらこう考える」とか「自分の経験ではこうだった」などいろいろな角度から自由にアンサーを書いてもらいます。
このアンサーに感心したり、あるいは反論があったりしてまた交流が深まります。生徒たちも深刻になりすぎず、少しは余裕をもって進路選択に挑めればよいと思います。以下に一部を紹介。
A組:④テストで必ず1教科ひどいこと。どうにか毎回ある凡ミスをなくしたい。(T.M)
アンサー➡2週間前以前から勉強に取り掛かれば余裕をもってできると思います。もちろん、得意な教科も余裕をもってできるので、気持ちも楽になっていいと思います。(BS2菩薩)
B組:⑭自分は模擬試験などを受けて志望校判定の結果で行く高校を下げてしまっている。自信をなくしていると塾の先生や親に言われます。確かに最初は高校に入れば良い、と軽く考えていましたが、今では志望校選択がとても難しくなってきました。志望校を下げていってしまわないにはどのようにすればいいですか?(まちゅちゅ)
アンサー➡とりあえず頑張ること!!あと、ナスを食べると集中力がアップするよ↑(NASU×××)
➡まず、学校のテストで自分が納得のできるような点を取れるように勉強すること。頑張れ!(ナス)
※ナスの集中力の効用については未確認ですが。
C組:⑧文化発表会までは学校行事に全力で取り組みたいのに、「勉強しろ」と言ってくる親。文化発表会が終わってからやろうとしているのに理解してくれない。(試験だらけ)
アンサー➡俺が言えるようなことじゃないけど、考えが甘いと思う。いくら文化発表会前っていったって一日中練習している人なんていないはず。みんな文化発表会の練習と勉強を両立させているんだから、できるはず。今からでもまだ間に合うから文化発表会前とか関係なく勉強すべきだ。がんばって!俺も含めてみんな頑張ってるから。(はちろ~)
D組:⑯今のところ行きたいのは私立だけど、すでに兄が私立に行っているのでお金のことを考えると私は都立の方がいいだろうけど、私立の方もあきらめられない。(アグレット)
アンサー➡私もあなたと同じ考えです。私も今気になっている学校は私立です。でも、お金のことを考えると都立の方がいいのかな、と思いますが、やっぱり行きたいところに行った方がよいと思います。行きたくないところに行っても高校生活楽しめませんよ。(Pとりゃあ)
アンサー➡お金のことで不安になる気持ちはよくわかります。それでも自分の本当に行きたいと思う高校があるならちゃんと親と向き合って話すことで解決できると思います。誰にも話さずに根腐れするより話してみて当たってくだけた方がよいと思います。頑張って下さい。(リ―ク)
② 12月の進路(三者)面談後には「詩」で交流
11月、12月の三者面談を終えて多くの生徒が目標校を決めていきます。とはいえまだまだ不安と悩みも尽きません。そこで、そうした今の気持ちを今度は「詩」にしてもらいます。もちろん、きちんとした詩ではなく、「詩」のようなもので表現して欲しいのです。集まった「詩」も、学年だよりに年明けの受験本番まで載せていきます。以下は3年前に取り組んだ時のものの一部です。
キ モ チ
「さっさと勉強しなさい。」
そんなこと分かってる
耳にタコができるぐらい聞いているコトバ
でも……
自分が本当の自分に負けている
「いい加減にしなさい。」
それでも自分に負けてしまう
何でこんなに弱いんだろう?
自分に勝たなきゃ
母が言いたいことぐらいもう分かってる
でもそのコトバは冷たくない
何を言われても温もりがある
優しさだ……
こんな自分にこんなしつこく言う人は母だけだ
本当はすごくうれしい
心から……ありがとう
矛 盾
「勉強なんてやってらんないっスよ。」
そう言って、実は勉強してます。
「あぁ、もうやめてぇスよ。」
そう言って、本当は頑張っています。
何だかんだいって、受験生です。
今日
今日という日は
きのう亡くなった方が
生きたかった明日かもしれない
だから
力いっぱい頑張る
スタートライン
昨日、親の気持ちがやっと分かった
進路に対していい加減な自分に
なかなかうるさいお母さん
考え方の違ううちら
高校の話が始まると絶対目を合わせて話せない
だけど
昨日まで逃げてた話し合い
やっとできた
やっと親とスタートラインに立てた
打席
自分はいま
『高校受験』という投手を相手に打席に入っている
ここで思いっきりホームランを打ちたい
そして、ゆっくりと走って
ホームベースまで戻る
ベンチにいる家族や友だちが祝福してくれる
次はどんな投手が相手なのだろう
どんな投手でもかかってこい
またホームランを打ってやる